「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で始まる平家物語。
諸行無常はこの世の出来事には一つとして常なるものはなく変化してゆく存在なのだと教えています。しかし、この諸行無常はもう一面として人や自然の営みに栄枯盛衰はあるが、次の新しい芽を出しさらに大きく発展成長してゆくためのイノベーションの時でもあるのだと。

一本の小さな苗木は、春に芽をだし、夏に茂り、秋に色をつけ、冬に葉を落とす。冬の厳しい時期を耐え、春には、さらにひと回り大きくなり、5年、10年、20年とへて、やがては大木へと成長を遂げてゆく。それは人においても同じなのだと説いています。
すこし硬い話から入ってしまいましたが、デザインもそう言った法則性の中で息づいています。デザインと一口に言っても幅広いのですが、私の専門とするグラフィックデザインの他にも、インテリアデザイン、建築デザイン、ファッションデザイン、ヘアデザイン、プロダクトデザイン、工芸デザイン、映像デザイン、芸能デザイン…など細かく上げればきりがないぐらい沢山あります。

そして、このデザインを創造するエネルギーが、この世の中を動かす原動力なのだといえます。50年、100年前に創られたデザインのほとんどは、淘汰され、残っているものでもそのままの形ではなく時代につれ変化して現在に至っています。人々の創造エネルギーは停滞を好まず、常に新たな切り口を求めチャレンジしています。しいては、その行動が多くの人々の変化のない生活へ潤いを与え、感動を与え、活動するエネルギーをも生み出します。
現在や過去を良しとする「創造年寄」から、新しい美しさや感動を人々に伝えるために「創造若人」が時代のバトンを握ります。時には革新的ゆえに、その変化にとまどう人々と衝突を繰り返しながら次第に時代の花に迎え入れられます。